みちの道

人生を変えるヒントがココにある

Michi no michi

毎日がちょっとハッピーになる情報

『小説』 無題 3

「結子ちゃん、起きた?ご飯できてるわよ。昼ごはんだけどね」

 

律子ママが、結子を呼びに来た。

 

「お腹すいてないからいいや」

 

と、そっけない声を出す。

 

「ダメよ。いいから降りてらっしゃい」

 

律子ママは、言い出したら引き下がらない事を結子は知っていた。

 

頭をかきむしりながら、しぶしぶ階段を下りて行った。

 

店に顔を出すと、オカマバーで働くオカマ達が、むさぼる様に律子ママの手料理を食べていた。

 

いや、お姉さまと呼ばないと、どすの利いた声で怒られる。

 

ここで働くお姉さま達はみんな、この店の2階に住んでいるのだ。

 

夜は、不健康なギラギラしたライトが照りつける店内も、昼間はカーテンを開けている。

 

肌に刺さるような初夏の日差しが、店内を明るく照らし出していた。

 

心なしか爽快な気分になり、お姉さま達とは離れたカウンターに座る。

 

目の前に置いてあるポットから、冷水をコップに注いだ。

 

一気に飲み干すと同時に、律子ママが、お盆に乗せた食事を運んできた。

 

バランスの取れた、野菜中心の和食だ。

 

律子ママは料理上手で、みんなの健康のために、いつもこうやって食事を作ってくれる。

 

世間のはみ出し者扱いの彼らを全面的に面倒をみていた。

 

「また二日酔い?だから飲み過ぎだって言ったでしょ」

 

また小言が始まったと思い、結子は面倒くさそうに顔をあげた。

 

「とにかく食べなさい。またすぐ仕事なんだから」

 

「食欲ないってば。でもいつも栄養満点のご飯だよね」

 

「そりゃそうよ。ただでさえ不健康な生活してるんだから、食事くらい健康的にしないと体がもたないわ」

 

確かにそうだ。夜に仕事をするのは、体力的に消耗する。

 

人間が本来、休むべき時間、眠るべき時間に働いているのだから。

 

「たまには栄養、摂っておこうかな」

 

「そうよ、食べなさい。そして、元気に今日も働くのよ」

 

「いただきます」

 

律子ママの作った手料理が、体中の足りないものを満たしていくのを感じた。

 

そして、心の栄養も。